皆さん、今日はこの2日間東京で参加したOpenAI Japan関連のイベントについてお話ししたいと思います。
彼らの講演を聞いて、いろいろと思うところがありました。正直、胸の内にしまっておけないので書いてみます。
まず結論から言います。
正直、少し不安を感じました。
私は普段から転職の可能性を意識している人間なので、これまでOpenAI Japanには強い憧れを抱いていました。
しかし今回のイベントを通して、その憧れはかなり薄れてしまいました。
では、なぜそう感じたのかを書いていきます。
唯一の好印象:とにかく皆さん人柄が良い
今回のイベントでは3つの講演があり、私は最初と最後のセッションを聞きました。どちらもOpenAI Japanの講演です。
まず良かった点から。
これは素直に評価したいのですが、OpenAI Japanの社員の皆さんは本当に人柄が良いです。
皆さんも経験があると思いますが、IT業界には時々「自分は特別だ」と言わんばかりの態度の人がいますよね。
しかしOpenAI Japanの方々にはそういう雰囲気が全くありませんでした。
コミュニケーション能力が高く、話し方も非常に丁寧で柔らかい。
リーダー層から責任者、そしてFDE(Forward Deployed Engineer)に至るまで、例外なく礼儀正しく好印象でした。
ただ……
正直なところ、それ以外の長所があまり思い浮かびません。
無理に褒めようとも思いましたが、なかなか見つかりませんでした。
強いてもう一つ挙げるなら、グローバル採用のポジションでは英語と日本語の両方が求められていましたが、実際に行ってみると欧米出身の責任者の方の日本語が非常に流暢で、私よりずっと上手でした。
なので、語学面については想像していたほど高い壁ではないかもしれません。
さて、ここまで褒めたので、ここからは率直な感想を書いていきます。
第一部:最新技術を使っているのに、やっていることは20年前と変わらない?
最初の講演のテーマはOpenAI FDE(Forward Deployed Engineer)でした。 革新的な技術アップデートを掲げ、日本の大企業との協業事例も紹介され、デモは非常に華やかでした。
その中で彼らが強くアピールしていた事例がありました。 日本の超大手企業が保有する古いCOBOLシステムを、Codexを使って自動的にJavaへ変換するというものです。 画面上ではCOBOLコードが読み込まれ、瞬く間にJavaコードへ変換されていきます。 数字が高速で更新される様子は確かに迫力がありました。
しかし、私が違和感を覚えたのはまさにそこです。 私の考えるFDE、そして次世代FDEが成功する条件とは、「0から1を生み出すイノベーション」です。 ここで言う0から1とは、古いシステムを別の言語で書き直すことではありません。 それでは企業の業務そのものは何も変わりません。 ビジネスモデルも業務プロセスもそのままです。 単に「コード翻訳機」を作っただけです。
私が業界に入った2005年頃も、Javaの売り文句は今とほとんど同じでした。 C++のようにポインタやメモリ管理を気にする必要がなく、人間が考えるロジックをそのまま表現できる。 当時もCOBOL→Java変換ツールは数え切れないほど存在していました。 それから20年以上経った今、また同じ話をしているのです。 つまり、FDEの理念と紹介された事例が噛み合っていない。 そう感じました。
さらにこれは技術の問題だけではありません。 雇用の問題でもあります。 COBOLエンジニアの多くは50代、60代です。 Javaエンジニアも40代以上が中心でしょう。 いきなり「人を不要にする」ことばかりを前面に出すのはどうなのか。 また、数万ファイルを自動変換したとして、本当にノーチェックで本番投入できますか? 結局、人間が確認する必要があります。 それなら工数は完全にはなくなりません。 開発費も発生します。 場合によってはコスト削減どころか、かえって高くつく可能性すらあります。
さらに、企業システムの本質的な業務ロジックは意外と少なく、多くのコードは例外処理や事故防止のための防御ロジックです。 その防御の考え方は時代ごとに異なります。 単純なコード変換では、その前提が崩れる可能性があります。 私は、本当に価値があるのは企業の利益を増やすことだと思います。 コスト削減だけを追い続ける企業には限界があります。 成功している企業は「どう投資してより大きな成果を生むか」を考えています。 その意味で、大企業相手に「コスト削減」を主軸に提案するのは、少し視野が狭いように感じました。
第二部:質疑応答で感じた不安
二つ目の講演もFDEチームによるものでした。 こちらも皆さん非常に感じが良く、話し方も上手でした。 ChatGPTとPowerPointを連携させて美しいプレゼン資料を生成する機能や、Codexを中心にAgent、Skills、MCP、APIを統合する事例などが紹介されました。
その後のQ&Aで、私は3つの質問をしました。 そして、その回答からいくつかの不安を感じました。
質問1:戦略はどうなっているのか?
私はこう質問しました。
今日の話はCodexが中心でした。しかし5月にはOpenAIはGPT RealTime 2とOpenAI Agent SDKも発表しています。日本市場ではこれらをどう展開する予定ですか?それともCodex一本に集中するのでしょうか?
回答は少し曖昧でした。 社内でも検討しているが、最終的には顧客ニーズ次第であり、今年はCodexを中心に推進している、という内容でした。
この回答を聞いて不安を感じました。 大企業であれば通常、「今期は何を重点的に推進し、その次は何を推進するのか」という明確なロードマップがあります。 CodexとAgent SDKをどう棲み分けるのか。 GPT RealTime 2をどのタイミングで展開するのか。 そういった説明を期待していました。 しかし、その戦略が見えてきませんでした。
また、FDEという役割にも疑問を感じました。 私が理想とするFDEは、営業・エンジニア・アーキテクトを兼ね備えた存在です。 顧客の言葉の裏にある本当の課題を見抜き、業務を再設計し、AIで実装まで高速化する。 そういう存在です。
しかし今回の回答から、「営業は営業、エンジニアはエンジニア」という従来型の分業構造に感じました。 それではFDEの本来の価値が十分に発揮できた。。。かな?。。。と
質問2:サーバー負荷の問題は考えているのか?
私は次の質問をしました。
Codexを企業の業務中枢に据える場合、ローカルLLMとの連携やオンプレミス構成は検討していますか?
回答は、「現在はGPT-5.5とのクラウド連携がベストプラクティスです」というものでした。 間違った回答ではありません。 しかし私が懸念しているのは別の点です。
すべての企業がクラウドのGPTに依存したらどうなるのでしょうか。 利用者が急増したとき、インフラは耐えられるのでしょうか。 企業の重要業務まで影響を受けるリスクがあります。
私としては、
- 企業内に独自のAI基盤を構築し、
- 日常業務はローカル処理、
- 高度な課題だけクラウドGPTを利用する
というハイブリッド構成を期待していました。
特に保守的な日本企業には、その方が受け入れられやすいと思います。 しかし現時点では、その方向性は感じられませんでした。
質問3:私は仲間になるべきか、競争相手になるべきか?
最後に少し踏み込んだ質問をしました。
今のFDEブームの中で、私はOpenAI Japanを目指すべきでしょうか。それとも自社でFDEチームを立ち上げて競争すべきでしょうか。
私は彼らの志や野心を知りたかったのです。 もし私なら、「ぜひ話をしましょう。一緒に市場を広げましょう。」と言うと思います。
しかし返ってきたのは、「みんなで一緒に盛り上げていきましょう」という当たり障りのない回答でした。
私はここでさらに不安になりました。
IPOを目指す企業としての野心も、日本市場を本気で取りに行く覚悟も、、、うむ、、、感じが薄ㇲㇲㇲㇲㇲいです。
結論:単なる小規模イベントだったのかもしれない
もちろん、今回のイベントだけで会社全体を判断するのは早計かもしれません。 そもそも主催はOpenAIではなく別のイベント会社でした。 規模の小さいイベントだったため、本気の姿を見せていなかった可能性もあります。
その一方、逆に私にとってそれでも良い気づきになりました。 OpenAI Japanも万能ではない。 FDE市場はまだ成熟しておらず、これから多くの企業や人材が方向性を作っていく段階なのだと思います。 むしろ大企業だからこそ細かな市場開拓までは手が回らず、そこに新しいチャンスがあるようにも感じました。
なお、これはあくまで個人の感想です。 OpenAIを批判したいわけではありません。 私はGPT、Sora、Codexの大ファンです。 期待が大きかったからこそ、現実とのギャップを感じたのだと思います。
また、本記事は投資助言ではありません。
OpenAIには今後も発展してほしいと思っています。 ただ私自身は、今後は一企業というより「優れたツール提供者」として見るようになるかもしれません。 競合他社も急速に追い上げています。 Codexが良いスタートを切ったとしても、その優位性を維持できるかはまだ分かりません。
個人的には、7月開催予定のGoogle Cloud Next Tokyo 2026の方が今は楽しみです。 Googleは企業向け戦略が非常に明確で、「どの市場を、どのように攻略するのか」というロードマップが見えやすい。 クラウド依存のリスクはありますが、それでも事業戦略や市場展開への本気度は感じられます。 その点では、現時点ではGoogleの方が魅力的に映っています。

