「取引の図解」で9つのビジネスモデルを読み解く
ビジネスモデル 取引の図解 読了時間 14分

「取引の図解」で9つのビジネスモデルを読み解く

ビジネスモデルを「取引の図解」で整理する方法を解説します。横軸に価値の創造方法(単体・組み合わせ・連合の力)、縦軸に収益の獲得方法(バリューチェーン・リカーリング・三者間市場)を置き、製造販売や流通小売、リカーリング、フリーミアム、広告、マッチング、プラットフォームなど9つの基本モデルを紹介。複雑な経営も基本動作に分解でき、業界を問わず戦略を読み解く武器になると説きます。

“価値の源泉” × “もうけの獲得方法”で考える

ビジネスモデルという言葉を聞くと、少し難しく感じるかもしれません。

「何を売るのか」 「誰に売るのか」 「どうやって儲けるのか」 「サブスクリプションなのか、広告なのか、プラットフォームなのか」

こうした要素が一度に出てくるため、話が複雑になりやすいからです。

そこで役に立つのが、今回紹介する「取引の図解」です。

この考え方では、ビジネスモデルをまず2つの軸に分けて考えます。

横軸は「価値をどう生み出すか」。 縦軸は「その価値から、どうやって収益を得るか」。

そして、この3×3の組み合わせから、9つの基本的なビジネスモデルを整理します。


まず、この図は何を見ているのか?

この図を見るときに最も大切なのは、いきなり「9種類を覚えよう」としないことです。

先に見るべきなのは、横軸と縦軸です。

考え方はとてもシンプルです。

横軸:何が価値を生み出しているのか? 縦軸:その価値を、どうやってお金に変えているのか?

つまり、ビジネスモデルを、

価値の作り方 × 収益の取り方

として分解して見るわけです。

この2つを分けて考えると、複雑に見えるビジネスでも構造がかなり見えやすくなります。


横軸の見方

「価値の源泉」はどこにあるのか?

横軸には、価値を生み出す3つの方法があります。

1. 単体の力

最もシンプルなのが、商品やサービスそのものに価値があるパターンです。

たとえば、

  • 自動車
  • 家電
  • 建築サービス
  • 運送サービス
  • ソフトウェア製品

などです。

顧客が買う理由は、基本的にその商品やサービス自体にあります。

つまり、

「この商品が欲しい」 「このサービスを受けたい」

という価値です。

製品力、品質、機能、デザイン、ブランド力などが競争力になります。


2. 引き合わせの力

2つ目は、誰かと誰かをつなぐことで価値を生むモデルです。

ここでは、商品そのものよりも、

「必要としている人」と 「提供できる人」

を結びつけることに価値があります。

たとえば、

  • 小売
  • 人材紹介
  • 不動産仲介
  • ECモール
  • マッチングサービス

などです。

企業が価値を生む理由は、自分自身がすべての商品を作るからではありません。

情報を集めたり、売り手と買い手を結びつけたりすることで、取引そのものを成立させるからです。


3. 組み合わせの力

3つ目は、複数の商品・サービスを組み合わせることで価値を高める方法です。

たとえば、ある商品単体では利益が小さくても、別の商品と組み合わせれば全体で利益が出ることがあります。

また、本体と消耗品、本体とソフトウェア、本体と保守契約のように、補完関係をつくるケースもあります。

代表例としては、

  • ドラッグストアの商品構成
  • プリンターとインク
  • 工作機械と保守サービス
  • ゲーム機とゲームソフト

などです。

ポイントは、

「1つの商品だけで考えない」

ことです。

ビジネス全体の組み合わせによって価値を作っています。


縦軸の見方

「もうけの獲得方法」はどうなっているか?

次に縦軸です。

こちらは、どのように収益を回収するかという視点です。

大きく3つに分かれます。


1. 価値連鎖

最も一般的な形です。

商品やサービスを作り、流通させ、販売し、顧客から代金を受け取ります。

基本的には、

商品・サービス → 顧客 顧客 → 代金

という取引です。

製造、仕入れ、物流、販売などの一連の活動の中で利益を生み出します。

たとえば、

  • メーカー
  • 建設会社
  • スーパー
  • コンビニ
  • 運送会社

などです。

一言でいうと、

「売って、その取引から利益を得る」

というモデルです。


2. リカーリング

リカーリングとは、一度売って終わりではなく、継続的に収益を得るモデルです。

たとえば、

  • 月額課金
  • 定期購読
  • SaaS
  • 保守契約
  • 消耗品販売
  • 継続利用料

などがあります。

このモデルの強みは、毎回ゼロから新しい顧客を探さなくても、既存顧客から継続的に売上を得られることです。

つまり、

「一回の売上」ではなく 「顧客との長期関係」

が重要になります。


3. 三者間市場

3つ目は、企業自身が直接すべてを売るのではなく、第三者として市場や場を作るモデルです。

ここでは通常、3者が存在します。

たとえば広告モデルなら、

  • メディア企業
  • 利用者
  • 広告主

です。

マッチングモデルなら、

  • プラットフォーム
  • 供給側
  • 需要側

です。

企業は、複数の参加者をつなぐことで価値を生み、その取引やアクセスから収益を得ます。

このモデルは、インターネットとの相性が非常に良いのが特徴です。


では、9つのビジネスモデルはどう見るのか?

ここまで理解すると、9つのモデルはかなり簡単に見えます。

9つは、まったく別々のモデルではありません。

3つの価値の作り方 × 3つの収益化方法

の組み合わせです。

つまり、

単体の力引き合わせの力組み合わせの力
価値連鎖1 製造販売2 流通小売3 合算
リカーリング4 継続5 フリーミアム6 設置ベース
三者間市場7 広告8 マッチング9 補完財プラットフォーム

という関係になっています。

ここが、この図の一番重要なポイントです。


1. 製造販売モデル

単体の力 × 価値連鎖

最も基本的なモデルです。

企業が商品やサービスを作り、それを顧客に直接販売します。

たとえば、

  • 自動車メーカー
  • 電子部品メーカー
  • 建設会社
  • 運送会社

などです。

価値は商品やサービスそのものにあり、収益は販売取引から得ます。

非常に分かりやすいビジネスモデルです。


2. 流通小売モデル

引き合わせの力 × 価値連鎖

このモデルでは、企業自身が必ずしも商品を作る必要はありません。

商品を仕入れ、顧客が買いやすい場所や形で提供することに価値があります。

たとえば、

  • スーパー
  • コンビニ
  • 小売店

などです。

メーカーと消費者をつなぐことで価値を生み、仕入れ価格と販売価格の差などから利益を得ます。


3. 合算モデル

組み合わせの力 × 価値連鎖

合算モデルでは、一つの商品だけの利益を見るのではなく、複数の商品をまとめた全体収益を見ます。

たとえばドラッグストアでは、一部の商品を安く売って顧客を呼び込み、別の商品で利益を確保することがあります。

ある商品では儲からなくても、

「店舗全体」 「顧客一人あたりの買い物全体」

で利益が出れば成立します。

セット販売やクロスセルも近い考え方です。


4. 継続モデル

単体の力 × リカーリング

商品・サービスそのものを、継続的に利用してもらうモデルです。

代表例は、

  • 新聞の定期購読
  • 動画配信
  • SaaS
  • 月額サービス
  • 会員サービス

です。

価値の中心はサービスそのものですが、収益は一度ではなく継続して発生します。


5. フリーミアムモデル

引き合わせの力 × リカーリング

フリーミアムは、

Free(無料)+ Premium(有料)

を組み合わせたモデルです。

多くのユーザーを無料で集め、その中の一部に有料プランへ移行してもらいます。

たとえば、

  • スマートフォンアプリ
  • クラウドサービス
  • Webサービス
  • オンラインゲーム

などです。

無料ユーザーが増えることでサービスの価値が高まり、そこから一定割合が有料化することで継続収益を生みます。

つまり、単なる「無料サービス」ではなく、

無料で顧客を集め、有料利用へつなぐ設計

が重要です。


6. 設置ベースモデル

組み合わせの力 × リカーリング

このモデルは、製造業やITで非常に重要です。

最初に本体やシステムを導入し、その後に、

  • 保守
  • 消耗品
  • 部品
  • ライセンス
  • 運用
  • アップデート

などで継続収益を得ます。

たとえば、

  • 工作機械
  • 半導体製造装置
  • プリンター
  • 基幹システム
  • 業務システム

などです。

本体単体ではなく、導入後のサービスまで含めた組み合わせで利益を作ります。


7. 広告モデル

単体の力 × 三者間市場

広告モデルには、

  • メディア企業
  • 利用者
  • 広告主

の3者がいます。

利用者には無料、または低価格でコンテンツを提供し、その利用者の注目やアクセスを広告主に提供します。

代表例は、

  • テレビ
  • 新聞
  • Webメディア
  • 無料情報サイト
  • SNS

などです。

利用者から直接大きく課金するのではなく、利用者を集めること自体が広告価値になるわけです。


8. マッチングモデル

引き合わせの力 × 三者間市場

マッチングモデルでは、企業は売り手と買い手を直接つなぎます。

たとえば、

  • 人材紹介
  • 不動産仲介
  • フリマアプリ
  • ECモール
  • 配車サービス
  • 旅行予約サイト

などです。

供給側と需要側を集め、その取引を成立させることで、

  • 仲介手数料
  • 成約手数料
  • 掲載料

などを得ます。

このモデルでは、参加者が多くなるほど利便性が上がることがあります。


9. 補完財プラットフォームモデル

組み合わせの力 × 三者間市場

9番は、9つの中でも少し高度なモデルです。

代表例はゲーム業界です。

たとえば、ゲーム機メーカーが本体だけを売るのではなく、その上で多くのゲーム会社がソフトを提供できる環境を作ります。

すると、

ゲームソフトが増える ↓ ゲーム機の魅力が高まる ↓ ユーザーが増える ↓ ソフト会社も参入したくなる

という循環が生まれます。

これはゲームに限りません。

  • スマートフォンとアプリ
  • OSとソフトウェア
  • クラウドと各種SaaS
  • EC基盤と出店者

などにも見られます。

本体と補完財を組み合わせ、その周囲にエコシステムを作るモデルです。


横軸と縦軸の関係は、どう理解すればいいのか?

ここが一番重要です。

横軸と縦軸は、どちらか一方を選ぶものではありません。

一つのビジネスを、2つの角度から見ています。

たとえば、SaaSを考えてみます。

まず横軸で考えます。

「このサービスは何によって価値を生んでいるのか?」

サービスそのものが価値なら「単体の力」です。

次に縦軸で考えます。

「どうやってお金を回収しているのか?」

月額課金なら「リカーリング」です。

したがって、

単体の力 × リカーリング = 継続モデル

と整理できます。

このように考えると、自社のビジネスを9マスのどこに置けばいいのかが分かります。


ただし、実際の企業は1つのモデルだけではない

ここも重要です。

9つのモデルは、企業を完全に分類するための箱ではありません。

実際の企業は、複数のビジネスモデルを組み合わせています。

たとえばAmazonを考えると、

  • EC小売 → 流通小売モデル
  • Marketplace → マッチングモデル
  • Prime → 継続モデル
  • 広告 → 広告モデル
  • AWS → 継続モデル

など、複数の構造を持っています。

Appleも同様です。

  • iPhone販売 → 製造販売モデル
  • AppleCare → 設置ベースモデル
  • iCloud → 継続モデル
  • App Store → 補完財プラットフォームモデル

というように見ることができます。

つまり、この9分類は、

「この会社は何モデルか?」

と一つに決めるためのものではなく、

「この会社は、どのモデルをどう組み合わせているのか?」

を見るためのフレームワークなのです。


9つのモデルを見るときの3ステップ

実際に企業や新規事業を分析するときは、次の順番で見ると分かりやすくなります。

Step 1:価値はどこから生まれているか?

商品そのものなのか。 誰かをつなぐことなのか。 複数の商品・サービスの組み合わせなのか。

Step 2:収益はどのように発生しているか?

一回の販売なのか。 継続課金なのか。 複数の参加者から収益を得る市場型なのか。

Step 3:その交点を見る

この2つを掛け合わせることで、9つの基本モデルのどこに近いかが見えてきます。


このフレームワークは、新規事業にも使える

この図は、既存企業を分析するだけでなく、新規ビジネスを考えるときにも使えます。

たとえば、現在の事業が「製造販売モデル」だとします。

そこで、

「継続収益を追加できないか?」

と考えれば、

保守契約、消耗品、サブスクリプションなどを追加し、設置ベースモデルや継続モデルへ広げられるかもしれません。

あるいは、

「自分たちだけで商品を提供するのではなく、他社も参加できないか?」

と考えれば、

マッチングモデルやプラットフォームモデルへ発展できる可能性があります。

つまり9つのモデルは、単なる分類表ではありません。

事業を次の段階へ進化させるための発想ツールとしても使えます。


まとめ

9つのビジネスモデルを理解するときは、9種類を丸暗記する必要はありません。

まず、この2つだけ覚えておけば十分です。

横軸:価値をどう生み出しているか 縦軸:その価値からどう収益を得ているか

そして、

3つの価値の源泉 × 3つのもうけの獲得方法 = 9つの基本モデル

と考えます。

この見方を身につけると、企業を見るときにも、

「この会社は何を売っているか」

だけではなく、

「本当の価値はどこで生まれているのか」

「どの部分で収益を回収しているのか」

「別のモデルを組み合わせる余地はないか」

というところまで考えられるようになります。

「取引の図解」の本当の価値は、ビジネスモデルを分類することではありません。

複雑な商売の仕組みを、一度シンプルな構造に戻して考えられること。

そこにあります。

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